劇場版新作長編アニメ 試写会オフ会 1


わくわくと不安を胸に迎えた、オフ会初日の1月17日。
私は家を午前6時30分に出た。心配性の神経質で、朝4時過ぎから仕度を始めていた。
待ち合わせは、池袋東武百貨店2F5番地特設会場に13時。
ここにスタンプラリーの台紙と、スタートとなる王妃さまのスタンプがあるからだ。
景品のクリアファイルは同店8Fサービスカウンターでの交換で、受付け時間は夜7時までとなっている。


【公式】より

東京へ着いた私は、いったんホテルに荷物を置きに行った。スタンプラリーには身軽に行きたい。
ホテルには、Web予約時に“チェックイン前の荷物預け”にチェックマークを入れておいたので、手続きは簡単だった。荷物を渡し、引き換えにナンバーの入ったタグをもらうだけ。私はそれを失くさないように、しっかりしまった。
私は基本的にぼんやりしているので。
「よーし、行くかな」
ホテルのロビーの洗面所で鏡を見ながら、独り言に気合を入れる。いなか住まいのため、電車が苦手なのだ。地元の駅のホームには、電車は右からと左からしか来ない。複数の路線が乗り入れることも、地下を走ることもない。私にとって東京の路線図は複雑で、非常に気が重いのだ。
ホテルから池袋までは乗り換えが2回あり、メトロも使う。
スマホで乗換案内を確認し、ホテルから徒歩5分のメトロ入り口へ向かった。


池袋東武百貨店2F

矢印通りにここを曲がると


おお、特設会場!





スタートになるアントワネットのスタンプ台


向かい側には少女時代の王妃さま




そしてフォトスポット



さて。
1番早く待ち合わせ場所に着いた私は、まずは台紙を探して辺りをきょろきょろ。
アントワネットのスタンプ台の横にあるチラシのスタンドは空。仕方ないので店内スタッフに聞いてみると「催事場のチラシ置き場に昨日までありましたが、今はなくなっているみたいですね。サービスカウンターでお尋ねください」とのこと。
昨日まではあった…?
すでにそれほど多くの人がスタンプラリーをまわっているのかとびびりあがった私は、すぐにグループLINEに報告。
『池袋東武百貨店2Fに着いてるんだけど、スタンプの台紙がないのだが。スタッフに聞いたら、“昨日まではあったけど、今はないみたいだから、サービスカウンターでお尋ねください”って言われました』
この伝書鳩のような文章に
『開始2日目で!?』
というリプライを目に映しながら、私はサービスカウンターのある8Fへ向かう。先ほど乗ってきたエスカレーターで階を上がり、7Fまできたところで
「は?」
エスカレーターはそこまでで終わり。
8Fまで行かないのかよ。
私の住むいなかのデパートは、そもそもが5階ぐらいまでしかフロアがなく、エレベーターもエスカレーターもすべての階をフォローしている。大都市の高層階のデパートでは、行先階によって乗るエレベーターやエスカレーターが振り分けられていることを、私はすっかり忘れていた。
これだから都会は!
そんなことを思いながらエスカレーターを離れ、どこか壁際、もしくは端の方へと向かう。しばらく歩くと案の定、エレベーターが見つかった。
のだけれど。
…こない。
全然こない。
エレベーターは複数台あるのだが、低層階で停まったまま、なかなかあがってこない。
それもそのはず。
この日の池袋東武百貨店は、『ぐるめぐり冬の大北海道展』が絶賛開催中。エスカレーターはアホのように混んでいた。
しかも
「はぁ?」
落ち着いて見れば、そのエレベーターは2F~7F対応。来たところで8Fには行かないのだ。
マジかよ。
自分の学習能力のなさに苛立ちながら、私は広いフロアを小走りに、階段を探した。乗り換えの判らないエレベーターを探すより、階段の方が確実に思えたのだ。
そして閑散とした階段を見つけ、そこから8F催事エリアに出てドン引いた。押しくらまんじゅうをしているかと思うような、すごい人に。
冬の大北海道展。
私の地元でも北海道展は人気で、隣の市のデパートや駅ビルなどの催事場はとてもにぎわう。
(私の地元駅には駅ビルなんてない)
けれど池袋東武百貨店の北海道展は、人の多さも催事の内容も桁違いだった。
めっっっちゃおいしそう…
うちの地元に来るものとは、全然違う。本当にどれも美味しそうで、キラキラに輝いていて、夕方のニュース後半で見るグルメ特集のようだった。
うわー…
私はサービスカウンターを探しつつ、通りかかったスタッフを呼びとめた。
スマホの画面にスタンプラリーの画面を表示させて、それを見せる。口頭で説明するより、これが1番早い。
「これの台紙があるはずなのですが」
「エスカレーターわきのスタンドに、昨日はたくさんあったのですけど」
「わかりました。ありがとうございます」
すぐにその場を離れようとした私に、女性スタッフは「お調べしましょうか」と声をかけてくれた。けれど、お調べしてもらう方が時間がかかりそうな気がする。
「サービスカウンターへ行ってみます」
そういうと、女性スタッフは「助かります」と笑った。なにしろこのやり取りは、押しくらまんじゅうのさなか。女性スタッフもこんなところで立ち話などしたくなかっただろうし、膝の手術を何度もしている私にとっても人ごみは危険で、早くすいた空間に行きたい。
それに。


チョコミント!!

これが目の端に入っていた。
私はチョコミントが大好きで、チョコミントのアイスも大っ好きで
チョコミントのソフトクリームじゃーん!それも北見じゃん!!
これは食べるしかないだろうとチラ見しながら、私は催事場の奥へと向かう。
そもそもどちらが奥なのか判らない中で押し合いへし合い、行列もあちこちに出来ている。思うように進めないながら、ようやくサービスカウンターを見つけた。
結構な貧血女である私は、すでに息があがっている。
カウンター内に3人いたおねえさんたちは、そんな私にちょっと驚いていた。
「エレベーターが混んでいたので、階段を使ってきたものですから」
聞かれもしないのに私がそう言い訳をすると、彼女たちはとても納得がいったようだった。
「コレなんですけど」
私がスマホの画面をさし出すと、おねえさんたちはすぐにピンときて、スタンプ台紙を出してくれた。
「ありがとうございます。他の置き場になかったもので、スタッフの方にサービスカウンターへ行くように言われたので」
「なかったですか?補充しなくちゃ」
「すみませんが、これから連れがきて、みんなでスタンプラリーをまわります。なので、台紙をもう少しもらえませんか?私が待ち合わせに1番早く着いたので、用意をしておければと」
私がそう言うと、おねえさんが人数分の台紙を渡してくれた。
「助かります」
「ベルばらファンの方ですか?」
「そうですね。私は(地名)から。1番遠い方は(地名)からいらっしゃるんですよ」
「えええー、すごーい」
そんなやり取りののち、私はサービスカウンターを離れた。
そしてLINE。
『サービスカウンターに行って出してもらった。人数分ゲット。非常に疲れたので、今コレを食べている』



北見ハッカ通商のミントソフトクリーム。
ブースにはチョコミントのソフトクリームの写真が出されていたので、そのつもりで買いに行った。けれどオーダーするときになって、ミントとチョコミントの2種類あることが判った。
「悩むな…」
ものすごく混んでいる冬の大北海道展催事場のなかで、ものっすごく空いている(ストレートに言えば私しかいない)レジ前。
(なんでだ。チョコミントめっちゃ美味しいのに、なんで誰も並ばない!?)
「ミントとチョコミント、すごく悩む」
「悩みますよね」
レジのおにいさんは私を急かすこともなく、にこやかだった。
「私、ミント大好きなんですよー」
「そうなんですか?」
「ほら」
私はポケットにたくさん入れているハッカドロップを、つかみ出して見せた。(※ハッカはミントの品種のひとつ)
「おお~」
「いつも持ってるんです。ところで」
私はミントのキャンディの中にチョコレートが入っているものがあるか、聞いてみた。大好物なのだ。
「ありますよ。でもうちのお店ではなくて、違うブースですが」
「あら」
そんな話をしながら、私はソフトクリームをミントオンリーに決めた。
ちなみにお味は非常にマイルドだった。ミント感は弱めで、甘みがかっていて生乳感が強い。
私はひとけのない階段へ行き、自販機横に置かれたベンチに座って、このミントソフトクリームのレポをLINEに送った。
『ゆずさんの主食だ!』
『8Fの催事場は北海道フェアをやってるから、ものすごいおしくらまんじゅう状態だよ。ちょっと近寄れないぐらいすごい人』
『みんな揃ってから台紙を探してたら、すごい時間のロス。不幸中の幸い』
時間に余裕があるので、ゆっくりソフトクリームを食べてから、私は少し考えた。
チョコミントの方のソフトクリームを買いに行くか、待ち合わせ場所の2Fの特設会場に戻るか。
ううむ。
私は大変な後ろ髪を引かれながら、待ち合わせ場所に行くことを選んだ。
基本的にぼんやりしている私。
早め早めに動かないと、どんなポカをするか判らない。実はもう、大きなポカをやらかしていた。
メイク道具をまるっと忘れたのだ。
ホテルに荷物を預けに寄ったとき、ロビーの洗面所で軽く化粧をするつもりでいた。
預ける予定の小ぶりのソフトキャリーを開けて、メイクポーチを取り出そうとして
「あれ?」
取り出しやすいように1番上に入れたポーチ、それがない。2~3枚の衣類をめくってみても、見当たらない。
「おかしいなぁ」
キャリーの表面にある2つのファスナーポケットを開けてみても、入っていなかった。
「困るよ…」
本当に困るのは、化粧ができないことじゃない。そのポーチの中には使い捨てのコンタクトレンズが入っている。極端に目が悪い私が、今回の試写会のために新しく作った、今1番よく見えるコンタクトが入っているのだ。
このポカには本当に凹んだ。
子供の頃から、両目あわせて10回ぐらいは手術をしていて、私はものすごく目が悪い。そこに老眼も入ってきて、もうヤバヤバなのだ。
だからこそ、この幸運の試写会へのお招き、いや、アンドレからの招待状のために、新しくコンタクトを作ったのに。
すでに試写会にとっての最大のポカをやらかしていた私は、チョコミント愛よりもベルを選んで、待ち合わせ場所に戻った。
まずすることは、写真撮影。
私は写真を撮るのが大好きなのだ。
あっちからこっちから、そっちから向こうから、スマホとデジカメで50枚ぐらいは撮った。
そのあいだにも、私の横を人がゆっくり通り過ぎていく。東武百貨店のお客さまなのか、この展示を観にきた人なのか。
しっかり足を止めて展示を観る人、丁寧に写真を撮る人。キャッキャウフフでフォトスポットの中央に立つ人もいた。
うう。話しかけたい。
ヘンな人だと怖がられるのがオチなので、それはもちろん控えたけれど。
私は大げさではなく50枚ぐらいは写真を撮った。
それから、アントワネットのスタンプを押すことにした。
(ちなみに私が再びこの特設会場に戻ったときには、スタンプ台横のチラシのスタンドには、スタンプ台紙がじゅうぶんな量、置かれていた)
丁寧に、丁寧に。
まだ新しいスタンプは、きれいにくっきりと写った。
そして
「あ」
ここにきて私は、また新たなやらかしに気がついた。ホテルに預けたソフトキャリーの中に、ポケットティッシュを置いてきてしまったのだ。
スタンプラリーの所要時間は、概ね4時間。
「4時間半はみておいた方がいいと思う」
今回のオフ会にご参加くださる方が調べ、事前に教えてくれていた。
思ったよりも、けっこうかかるな。
そうなれば、最も優先されるのは、電車の運行状況。押したスタンプのインクが渇くのを、待っている余裕はない。インクの移り散らかしを防ぐために、ティッシュや薄葉紙などを挟む必要がある。そのため自宅から、たくさんのポケットティッシュを持ってきていたのだ。
なのに。
それらをそっくり、ホテル預けの荷物の中に置いてきてしまっていた。
まずいな…
『まだ家?』
私はまだ家にいるかもしれない可能性のある人に、事情を伝えてみた。
『なので、もしポケットティッシュが家にあるようなら、多めに持ってきてくれないかな』
『もう家を出ちゃったから、どこかで買っていくね』
『申し訳なーい』
こんなやり取りをしながら、私たちはほぼ定刻にアントワネットのスタンプ台前に集合した。
一頻りのご挨拶をしあったあと、さっそくそれぞれ、写真を撮ったりスタンプを押し始める。
そんなみなさんに私は言う。
「ねぇ。まだクリアファイル、あるかな?あるよねぇ?」
心配性な女なのだ。
「ゆずさんは写真撮らないの?」
「もう撮った。50枚ぐらい」
たぶん盛っていると思われただろう。
「いや、ガチで50枚ぐらい撮ったんだって」
そんな話をケラケラとしながら、私たちは東武東上線の改札へと向かった。


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